手形とは?

手形とは、売買代金や役務といったサービスの提供の対価として支払われる代金(業務委託の報酬、工事代金など)を一定の期間後に支払う際に、その支払いを約す証明として発行される証書の事を指します。
そのため、手元に現金が無くても取引が可能となり、ビジネスの際に常用されて来ました。
手形の種類
ビジネスの際に主に用いられる手形には以下のものがあります。

手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類があります。
まずはこれらの違いからお話します。
約束手形
文字通り2~3か月後の決済を約束する手形の事で、日本国内に於いて用いられる手形の9割以上がこの種類に該当します。
ビジネスシーンでは「手形=約束手形」と言っても過言ではありません。
為替手形
為替手形とは、手形を発行した企業が、第三者に支払いを委託する形式の手形です。
例えば、銀行に為替手形を発行すると、銀行は当該企業に代わって口座から買掛先に代金を支払います。
また、為替手形は売掛債権がある取引先等へ発行する場合もあり、この場合、為替手形を発行された取引先は、売掛債権を発行元ではなく、発行元の買掛先に支払う形となります。
手形のデメリット
ファクタリングは発行元に大きなメリットがありますが、発行先に大きなデメリットが生じます。

手形取引にはその仕組み上リスクが存在します。
ここでは代表的な3つの注意点を紹介します。
倒産・債務不履行(デフォルト)リスク
手形は「2~3か月程支払いを待つ」という信用取引になりますので、その間、手形を発行された企業は発行元が倒産する、債務が履行できなくなる、といったリスクを負います。
これを手形発行元の倒産・債務不履行(デフォルト)リスクといい、担保等が無い状況で代金決済までの期間を猶予する形となりますので、非常に大きなリスク・デメリットと言えるでしょう。
印紙税が掛かる
手形は課税文書となりますので、印紙税が必要となります。
具体的には、振り出した手形の額に応じた印紙を購入し、当該手形に貼付する方法によって納付します。
記載された手形の種類 | 税額 |
---|---|
10万円未満 | 非課税 |
100万円〜200万円以下 | 200円 |
200万円〜300万円以下 | 400円 |
300万円〜500万円以下 | 600円 |
500万円〜1,000万円以下 | 1,000円 |
1,000万円〜2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円〜3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円〜5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円〜1億円以下 | 20,000円 |
1億円〜2億円以下 | 40,000円 |
2億円〜3億円以下 | 60,000円 |
3億円〜5億円以下 | 100,000円 |
5億円〜10億円以下 | 150,000円 |
10億円以上 | 200,000円 |
詐欺リスク
所謂「取り込み詐欺」といった犯罪リスクが考えられます。
取り込み詐欺とは、代金後払いで商品を注文し、代金を支払わず商品のみを搾取してしまう、という詐欺行為です。
企業間取引を例にすると、パソコンやコピー機といった高額な事務用品を大量に購入・注文し、その代金を支払わないまま会社を倒産させて、商品そのものを売却し代金を騙し取るといった手口が主流です。
このように、手形取引には様々なリスクが潜在しています。

デフォルトリスクは「ファクタリングのリスク」でも登場しましたね。
弱みにつけ込む詐欺はどの金融取引でも付き物なのでしょうか…
手形割引とは
手形割引とは、期間が到来していない手形を第三者(割引人)へ譲渡し、現金に換金する事です。
一般的には銀行等の金融機関が割引人となり、割引人は満期日までの利息及び手数料を差し引き、依頼人の口座へ入金を行います。
このように、割引には利息や手数料を要しますので、満額よりも金額が少なくなってしまいますが、即時に現金が必要な場合に有効な手段として用いられます。

一昔前までは、主流な資金調達法だった手形割引ですが、昨今では手形取引自体が激減しており、あまり目にすることはなくなりました。
ファクタリング会社の一部はその昔手形割引を行っていたところもあります。
ファクタリングとの違い
債権を早期に現金化する、という点でファクタリングと手形割引は共通した性質を持っているといえます。
ただし、ファクタリングと手形割引は以下の点で大きく異なっています。
返済の義務・振出人のデフォルトリスク
3社間ファクタリングの場合、利用者はファクタリング会社へ債権そのものを譲渡するため、返済の義務はありません。
一方、手形割引は銀行等の金融機関に対し、「手形に裏書」をし、譲渡しますが、手形には手形法に於いて「買戻請求権」という権利を定めています。
これは、手形の振出人(手形に記載されている代金を支払う人、会社)が経営状態悪化等によって信用が著しく低下又は債務不履行に陥った際に、手形を譲り受けた者は裏書をした手形の譲渡人に買取を請求できるという権利の事です。
つまり、手形を現金化したのは良いものの、振出人が債務不履行(デフォルト)となってしまった場合、その不良債権を再度買い戻さなければならなくなってしまうのです。

取引先倒産等による不渡りが発生した際の責任が利用者にあるか否かというのが大きな違いですね!
不渡り時のリスクは「ファクタリングと倒産リスク」でも詳しい説明があります。
手形の裏書とは
手形は債権を書面化したものですので、譲渡性を有しており、第三者間で取引する事が可能です。
その場合、手形の裏側に譲渡人(現在の債権者)の記名押印及び譲受人(新しい債権者)を記名し、手形を譲渡します。
これを「手形の裏書」といいます。

裏書をすると、債権が譲受人に移りますが、債務者が債務不履行に陥ると、譲受人は譲渡人に対し、手形を買い戻すよう請求する事が出来ます。
これを手形の買い戻し請求権といいます。
ファクタリングへの移行

建築業界や古くから付き合いがある企業間等では未だに多い手形取引ですが、日本全体で見ると1990年代から減少を続けており、ピーク時に比べ現在は10分の1以下まで縮小しており、その背景には前述した手形のデメリットに加え、経理処理が煩雑である事や、証券の紛失・盗難リスク等が原因として考えられます。
しかし、その一方で下請取引に於ける売掛金や買掛金の電子決済が増えており、電子手形は利用企業40万社を超えるとのデータも出ており、人気の理由として、電子化された手形には印紙が不要であり、パソコン等で管理が可能なため紛失の恐れがない事や、さらにはインターネットの普及等が挙げられます。
ファクタリング取引の増加
インターネットの普及や債権の電子化に伴い、ファクタリング取引が中小企業の間で近年増加傾向にあります。
人気の理由として、ファクタリング取引は債権そのものを買い取る方法又は債権の早期支払いを受ける資金調達のため、取引先の不渡りや詐欺被害のリスクが無く、安全に現金化が出来る点などが挙げられ、今後も増加していく見込みとなっています。
手形の裏書が不安な場合や、銀行融資を断られてしまった場合などに一度検討してみても良いかもしれません。

手形取引が70年〜90年代にかけ日本の高度成長を支えてきたのは疑いのない事実です。
中小企業を支える資金調達という点では、ファクタリングが今後の経済成長の鍵を握っていると言っても過言ではないのです。