運送業でファクタリング需要が高い理由

運送業のトラック

日本は自給率が低い国であるため、仮に物流がストップしてしまった場合、食料や生活必需品はたちまち手に入らなくなってしまいます。
つまり物流は、ビジネスはもちろん生活面において欠かせない存在なのです。

インターネット通販の普及によって運送業界の売上は上昇傾向にあるものの、ドライバーや配送スタッフの賃金が低い・サービスの質の低下等は大きな問題となっています。
なぜファクタリングを用いる運送業者が増えているのか・運送業が抱える問題点やリスクについて解説してまいります。

運送業は利益率が低いビジネス

運送業者は、インターネットが普及した2000代後半から大きく増加しました。
しかしながら、開業がしやすい半面で運送コストが不安定・運送報酬の下落などから、一般貨物運送事業者の数は2007年をピークに緩やかに減少傾向にあり、その後は増えたり減ったりを繰り返しています。
※以下は国土交通省・報道資料「一般貨物自動車運送事業者数」より抜粋

2008年3月末 2016年3月末 2021年3月末
57,672業者 56,722業者 56,959業者

運送業者には、大きく分けて「大手から反復継続して依頼を受ける」「個人から不定期に配送依頼を受ける」の2パターンの形態が考えられますが、前者は下請け(孫請け・ひ孫請けなど)であるケースが多く、後者は安定して仕事を受けている訳ではありません。
いずれも儲けが大きいとは言えず、中小企業の運送業者の利益率(利益÷収益×100)は僅か3%程度と言われており、いかに苦しい運営を続けているかを窺い知ることができます。

燃料油脂費の高騰は致命的

運送にあたって軽油・ガソリン・オイルなどの「燃料油脂費」は欠かせません。 原料となる原油は99%以上が輸入によるものであり、国際情勢によって大きく変動してしまうという特徴があります。
中には数か月で数十%アップしてしまったという事例もあり、燃料油脂費の高騰は事業の損益に直結する非常に大きな問題です。
中小規模の運送業者の多くは何とか利益を出しているような状況ですので、軽油・ガソリン・オイルの高騰によって、黒字から赤字に転じてしまうことも十分に考えられます。

さらに、これらの高騰が「一時的なものである」という点も経営者にとっては大きな悩みの種ではないでしょうか。
長期に及ぶのであれば運送報酬のアップに踏み切ることもできますが、数か月後に燃料費が元の値段に戻る可能性も否定できず、契約解除の要因となる恐れも十分に考えられます。

運送業全体の傾向

運送業の経営実態を調査報告としてまとめた「平成28年度経営分析報告書(全日本トラック協会発表)」によると、日本全国に於けるトラック運送事業者の営業利益率が7年ぶりに黒字(+0.2%)に転じたようです。
また、経常利益率は原油価格が最も上昇していた平成25年度の「▲1.2%」に比べ「+0.9%」にまで上昇した事を併せ、黒字事業者の割合も61%にまでアップしました。

なお、ファクタリング会社には「繁忙期による運営コストの増大」「事故、故障による突発的な出費」「長期支払いサイトの対応」といった相談内容が多いそうです。
運送業の売上は毎月大きく変動し、12月の年末商戦がもっとも忙しくなるのが一般的ですが、仕事量が増えればその分ガソリン代の負担も大きくなりますし、12月は業界全体で忙しくなるので道路渋滞も増えます。

結果的に燃料油脂費や賃金が増え「数か月後にまとまった売上が得られるが、キャッシュフローが一時的に悪化する」という事態に陥ってしまう可能性も十分に考えられます。
また、復旧工事・支援物資など、災害時・緊急時にも一時的に物流が増えることもあるため、売上やキャッシュの波は非常に大きい業界と言ってよいでしょう。

ファクタリングが人気な理由

走るビジネスマン

上記の理由から、運送業は安定性に欠けるビジネスであると言えます。
そのため、万が一の事態に備えて資金調達方法を予め確保している業者が多くなっており、中でもファクタリングは多くの経営者から選ばれています。

なぜならば、ファクタリングは運送業が有する「売上やコストが不安定」「予期せぬ出費が多い」「設備投資が高額」という特性にフィットするためです。
どのような活用方法が考えられるのか、一つ一つ確認してまいりましょう。

入金サイクルをファクタリングで調整

運送業は2か月(翌々月払い)程度の長期支払いサイトであるケースが多くなっており、元請会社が大手企業の場合はさらにそのスパンが伸びる可能性があります。
したがって、繁忙期や燃料費高騰によってキャッシュ不足に陥ってしまった場合であっても、しばらく耐えうるだけの財務状況を持ち合わせていなければなりません。

それでもなおキャッシュが足りなくなってしまった際はファクタリングがオススメです。
繁忙期に得た売上の一部をファクタリングによって現金化すれば、入金と支出のバランスを整えることができます。
また、急激な燃料費高騰によって一時的にキャッシュが不足してしまったケースにも対応することが可能です。

事故や車両故障などの予期せぬトラブル

運送業において、事故・車両故障は大きなリスクです。
もちろん、保険によって車両の修理代・事故に遭われた方への見舞金はまかなうことができますが、スタッフの確保・調整などでの出費は避けられません。
ファクタリングであれば売掛金を1~2日で現金に換えることができますので、このような予期せぬ出費にも対応できます。

また、車両が中型以上になると高額な法人保険への加入を求められますので、当該保険料の捻出をするためにファクタリングを利用する企業も多くなっているようです。
さらに、損害が保険の範囲外(積み荷の保証等)であり、多く思わぬ形で多額の資金が必要になってしまったため、ファクタリングを活用したといった事例も見受けられます。

急な設備投資にも利用できる

大型トラック(10t以上)の新車価格は2,000万円ほどです。
さらに、代替や修理費用も高額であり、保管だけでも毎月多額の固定費・大型トラックのドライバーの育成や募集にも大きなコストを要します。
事業開始又は拡大の際に多額な資金が掛かりやすい・銀行からの融資が受け辛い(コストが不安定なため)という点を鑑み、ファクタリングを選択する会社が増えています。

ただし、あくまでも売却するための売掛金が必要ですので「業績が好調であり、ここで車両を増やせればさらなる売上増加が見込める」といったシーンで利用するようにしてください。

入金サイクルをファクタリングで調整

手のひらと電球

このように、数多くのリスクを抱える運送ビジネス。
予期せぬ事態に備えるためにも、銀行融資・ビジネスローン・ファクタリングなど、ピンチの際に利用する資金調達法を予め定めておきましょう。
なお、突発的な利用であればスピード面で優れている2社間ファクタリングがオススメですが、コストの一定化や入金サイクルの調整が目的であれば、より手数料の低い3社間ファクタリングがオススメです。

また、ファクタリング会社の中には財務コンサルタントサービスを提供しているため、これらを併せて活用するのも一つの手です。
様々な可能性を想定した上で、企業にとって最も良い選択をしてください。