ABL(債権担保融資)とは

フォークリフトを運転するスタッフ

ABLとは「Asset Based Lending(アセット・ベースト・レンディング)」の略称で、銀行や信用金庫等の金融機関に売上債権(Asset)を担保として提供(Based)し、融資を受ける(Lending)という資金調達方法です。
債権だけではなく保有する商品やその在庫・動産・農畜産物等も担保として利用することができ、経済産業省や東京都の公式HPでも紹介されるなど、中小企業の新たなる資金調達方法として年々人気・期待が高まっています。

ABLもファクタリングも、債権を利用した資金調達方法であるという点で共通しておりますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
当ページでは、特徴やメリット・デメリット等を中心に、両取引の違いについて比較してまいります。

債権担保融資のメリット・デメリット

メリット・デメリットと書かれたボール

ABLの特徴やメリット・デメリットについて確認していきましょう。

まず、ABLには固定資産(不動産や車両等)が無くても融資が受けられる可能性がある・長期的かつ安定的な経営が見込めるといったメリットがあります。
さらに、冒頭でもお伝えしたとおり、担保は債権に限られず、商品の在庫や備品・設備なども提供することが可能です。

一方で、商品や在庫の価値は千差万別であり、過剰担保となる可能性があります。
また、万が一返済が遅れると、提供した担保を自由に処分することができなくなってしまいます(差押え)ので、ほんの少しのミスが倒産を招く可能性も否定できません。
なお、担保提供した商品の状況・在庫管理や債権の現状を、借入した金融機関に定期的に報告しなければならないため、維持管理が大変という点も同取引のデメリットです。

契約先には要注意

債権担保融資を取り扱っている金融機関はさほど多くはありません。
また、取り扱っていたとしても利用金額が数百万円ないしは数千万円~といったものがほとんどであり、利用のハードルが非常に高くなっています。

そのため、中には「10万円から利用可能」「保証人不要」「初月は金利0」などの甘い謳い文句で誘引し、過度に担保を取る・後から莫大な金利を請求する等の手口で不当に利益をせしめる悪徳業者も報告されています。
主要な動産・債権を取られてしまうと事業の継続が困難となり、最終的に会社が乗っ取られてしまう恐れも否定できません。
ご利用の際は、必ず大手金融機関や行政・公益団体等が提供するABLサービスを選ぶようにしてください。

ファクタリングとABLとの違いを比較

ファクタリングとABLを比較し、それぞれの特徴を考察していきます。
具体的には、両者には以下の通り違いが見られます。

債権担保融資 ファクタリング
契約内容 金銭消費貸借契約 売買契約
契約期間 長期 短期
目的物 債権・動産 債権
審査の対象 担保の価値
利用企業の信用・財務状況
売掛金の存在や価値
売掛先の信用・財務状況
登記 必要 有無どちらも可
審査のハードル 高い 低い
入金までの時間 1週間~
(担保によって異なる)
1~3日
コストの違い 金利 ファクタリング手数料

債権担保融資(ABL)は債権や動産を担保にしてお金を借りるため「金銭消費貸借契約」に当たり、ファクタリングは債権を譲渡して金銭を得る「売買契約」です。
つまり、ABLは毎月決められた額を返済してゆく長期的取引であり、ファクタリングは原則1回限りの短期的取引となります。
また、ファクタリングは目的物が債権に限定されますが、ABLは車両・商品・農畜産物など幅広い動産が対象という点でも大きく異なります。

審査項目に大きな違い

審査内容・項目にも以下の通り違いが見られます。
ファクタリングは売上債権(資産)の売買ですので、まずは当該債権が本当に存在しているのか、どの程度の価値があるのかを把握せねばなりません。
加えて、当該債権がきちんと履行されるのかも大きな判断ポイントです。
具体的には、売掛先の財務状況は安定しているか・これまでに履行遅滞は無かった等が重点的に審査され、逆に利用企業側の信用状況はさほど重要視されません。

一方で、ABLの場合は債権の担保価値に加えて、利用企業が「長期的に返済をしていけるのかどうか」までを深く審査されます。
つまり「債権または動産の担保価値」「利用企業や取引先の信用情報・財務状況」など、ファクタリング時の審査よりも広く・深く調査されます。
したがって、審査面に関してはABLの方が厳しいと言えるでしょう。

登記の要否

ファクタリング・ABL共に登記をしなければならないケースがあります。

ファクタリングは「債権譲渡」に該当するため、債務者(売掛先)に対し、債権を譲渡した旨の通知又は承諾が必要です。
しかしながら、2社間ファクタリングの場合は原則として通知や承諾を経ないため、ファクタリング会社側が不安定な立場に置かれてしまいます。
そのため、通知・承諾に代わる第三者対抗要件(債務者を除く)として「債権譲渡登記」を実施するのが一般的です。
ただし、こちらはあくまでもファクタリング会社側の保全措置であるため、ファクタリング会社の判断によっては実施されないことがあります(債権金額が少ない場合など)。

ABLの場合、登記の有無が対抗要件・成立要件となる訳ではありませんが、契約の段階で求められるケースが多いようです。
ABLの際に利用される登記を「動産譲渡登記」といい、本来は文字通り動産の譲渡を証明するための登記ですが、担保目的としても利用できます。
したがって、動産譲渡担保契約の締結後に登記を行うという流れが一般的です。

どちらを選ぶべきか

パソコンと会社の資料

両者を比較してみますと、それぞれに利点・不利点があることが分かります。
ファクタリングには審査が比較的緩め・スピード面で優れているといった利点がありますが、本来得られるはずであったお金が減ってしまいますので、反復継続した利用は危険です。

一方で、ABLには審査や利用金額において高いハードルを超えねばなりませんが、長期的かつ低コストでの利用が見込めますので、安定性に優れていると言えます。
両者を比較・検討しつつ、会社の状況に応じて使い分ける形がベストでしょう。

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