募集株式の発行とは

配当に関する資料

「募集株式の発行」とは、文字通り株式を発行して出資を募る資金調達の一種です。
株式とは、簡単に言うと株式会社の持主(株主)になれる権利のことで、株主になると会社が得た利益の一部をもらえたり、役員の選任や解任・重要な意思決定に関われるようになったりします。

株式に似た制度としては合同会社の「持分」がありますが、持分は予め上限が決められているため、新たに参加者(社員)を募るということはできません(社員になるには、現在持分を保有している人から譲り受けるしかない)。
つまり、募集株式の発行は株式会社のみに認められる資金調達手段ということになります。

株主になると何ができる?

株主総会をイメージした人形

募集株式に申し込む人(新たに株主になる人)を引受人といい、募集要項に則って金銭や物を出資することで株主となる権利を得ます。
株主になると「配当金を受け取れる」「倒産や解散時に資産から分配が受けられる」などのメリットがあり、さらに株主総会の議決に参加できるようになるため、間接的に経営に参加できるようにもなります。

なお、株主総会は会社の意思決定の於ける最高機関であり、原則としてどのような事柄でも決議することが可能です。
例えば、役員を選任又は解任したり、今後の経営を左右する重要な意思決定であったり、会社を解散したりと、ありとあらゆる事項を決めることができます。 つまり、株主は会社の“実質的な所有者”に当たるのです。

株式発行は株主総会決議事項

前述した通り、株式は言わば会社の所有権です。
ですが、1万円を出資した人と100万円を出資した人の決議権や配当金が同じでは、高額な出資を行ってくれる人がいなくなってしまいます。
そのため、株式会社は「株式数に応じて決議権や配当金が変わる」というシステムを採用しており、1株よりも2株・3株…といったように、持っている株式が多ければ多いほど、議決権や配当金は多くなります。

ただし、これにはある落とし穴が隠されています。
上画像の例でいいますと、会社は現在1万株を発行しており、Aさんは議決権を1/20・Bさんは議決権を1/10持っていることが分かります。
これが、仮に「株式を新たに1万株発行する」となったらいかがでしょうか?
発行総数が2万株となり、Aさんの議決権は1/40に、Bさんの議決権は1/20に薄れてしまいます(もちろん、配当金も下がる可能性があります)。

そのため、上場会社を除き、募集株式の発行は原則として既存株主の2/3以上の賛成(特別決議)を得なければなりません。
したがって、募集株式の発行は低リスクで資金調達が出来る半面で、多くの手続きを踏まなければならないのです。

株式発行によって得た資金は返済不要

株式発行の最大のメリットは「返済義務がない」という点です。
例外として一部の条件を満たせば会社に株式を買い戻すよう請求することができます(会社法106条・反対株主の株式買取請求など)が、原則として株主は出資したお金や物の返還を求めることはできません。

出資金は株主総会や取締役の判断によって自由に使用することができ、仮に利益が出なかったとしても会社側は責任を負いません。
そのため、出資者はどの会社に出資するのかをしっかりと精査する必要があります。
なお、仮に出資したお金を回収したい場合は第三者に譲渡する方法が一般的であり、株式市場と呼ばれる取引所では、日々株式の売買が行われています。

似て非なる資金調達方法として「社債の発行」という手段が挙げられますが、こちらは会社が債券を発行し、資金を集める方法です。
債券を発行した会社は、債券を購入してくれた人に対し、定期的に利息を支払った上で満期時に額面分を返済しなくてはなりません。
つまり、株式発行は出資金(純資産)が増え、社債は借入金(負債)が増える資金調達ということになります。

ファクタリングとの大きな違い

BAD・GOODと書かれたサイコロ

募集株式の発行と同様に、ファクタリングにも返済義務はありません。
メリット・デメリットをおさらいしながら両者を比較してみましょう。

スピード重視ならファクタリング

ファクタリングは、未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却し、その売買代金を運転資金に充てる資金調達方法です。
早ければ即日中に取引が完了しますので、数ある資金調達方法の中でもスピードに関しては群を抜いています。

一方で、募集株式の発行は「(1)株式総会決議」「(2)引受人の募集」「(3)払い込み」という手順が必要である上、募集期間が1か月以上に及ぶことも珍しくありません。
さらに、発行済株式総数や資本金は「登記事項」になりますので、変更が生じた場合には別途登記手続が必要です。
したがって、株式発行は手続きが煩雑なうえ、ファクタリングに比べて時間もかかると言えます。

コスト重視なら募集株式の発行

募集株式の発行の魅力は、やはり「返済が不要」という点です。
ファクタリングはあくまでも売掛金の売買ですので、自社の保有する資産を先んじて現金に換えているにすぎませんが、株式発行によって得た金銭や物は何もないところから生まれている点で大きな違いがあります。

さらに、場合によっては数千万円規模の資金を得ることも可能であるため、まとまった資金を用立てたいシーンにも適しています。
株式発行によって意思決定がスムーズに行えなくなる・既存株主の権利が害される等のデメリットも生まれますが、それ以上に多くの資金を返済不要で集めることができるという大きなメリットがあります。

ハイリターンだがハードルが高い

チャレンジと書かれた積み木

数多くのメリットがある株式発行ですが、中小企業で行われることはほとんどありません。
なぜならば、株式発行は非常にハードルが高い資金調達であり、現実的な手段とは言えないためです。

まず、出資はボランティアではなく、あくまでも「投資」です。
相応のメリットが無ければ出資する意味がありませんので、一般中小企業に多額の出資をする人がそう簡単には現れるはずもありません。
また、中小企業の多くは「株式の譲渡制限がある」「非上場企業」であるため、株式を自由に売買することができず、出資のリスクは高くなります。
高いリスクを冒してでも出資したい!という引受人が現れれば別ですが、よほどのことが無い限りは難しいでしょう。

ファクタリングとの併用がおすすめ

しかしながら、株式発行には高いハードルに見合うだけのメリットがありますので、狙ってみる価値は十分にあります。
専門家への相談を踏まえながら、ぜひ一度利用を検討してみてください。

なお、株式発行には多大な時間と労力が掛かりますので、場合によっては別の手段による資金調達が必要となります。
スピードと手軽さがファクタリングの魅力ですので、実際に出資がなされるまでの間の「つなぎ資金」として活用してみてはいかがでしょうか。

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