ファクタリング取引後のリスク

握手を交わす経営者

ファクタリング契約を締結後に起こりうるリスクとして「取引先からの入金がなされない可能性」が考えられます。
具体的には、取引先が倒産又は不渡りを出し履行不能に陥ってしまった若しくは債務不履行等が挙げられます。

原則、弁済の必要は無し

ファクタリングは、売掛金や未収金と言った売上債権を売却し、債権の早期回収若しくは現金化を図る金融取引です。
つまり債権の売買契約であり、売却後の事情については原則責任を負いません。
ただし、2社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社より売却金を受け取った後、取引先からの売掛金の入金をそのまま返済するという流れになります。

したがって、取引先からの入金が途絶えてしまうとファクタリング会社側に売掛金の引渡しができなくなってしまい「債務不履行責任に問われる可能性」も確かに考えられます。
結論から申し上げますと、2社間ファクタリングについても売掛金を売却した企業側が責任を負うことは原則としてありません。
なぜならば、債権譲渡後の責任については民法に規定されておらず、何らかの責任を負わせるのであれば、別途契約を締結する(債権回収の事務委託契約など)又は本契約に特約を付けるしかないためです。
一般的なファクタリング契約では債務不履行時の責任を負わせるような内容は規定されておりませんので、原則として利用企業側は責任を負わないということになります。

責任を負う場合もある?

手形の場合、手形法に譲渡人の責任が規定されています。
具体的には、手形を譲渡した人(裏書人)は債務者に不履行があった場合は連帯して責任を負うというもので、これを「裏書の担保的効力」といいます。

裏書の担保的効力(手形法第15条)

裏書人は反対の文言なき限り引受乃支払を担保す。(以下略)

ファクタリング取引において手形法を類推適用するのであれば、確かにファクタリングを利用した企業側は責任を負わねばなりません。
しかしながら、これはあくまでも手形の安全性や流動性を高めるための措置であり、一般的な債権譲渡若しくはファクタリングにこの責任を負わせてしまうとあまりにも譲渡人側が不利です。

そのため、一般的なファクタリング契約においてこのような責任はないのですが、日本には「契約自由の原則」があり、公序良俗に反する内容・著しく一方が不利な契約でない限り、当事者間の合意があれば成立してしまいます。
債務不履行時の責任を利用企業側に負担させる・債務不履行があった場合に金銭消費貸借契約へと切り替えるといった措置を講じる悪徳ファクタリング会社も確認されておりますので、必ず契約前に契約内容を確認するようにしてください。

償還請求権の有無について

返却を求める企業のイメージ

利用企業側への請求のことを、ファクタリング業界では「償還請求」と呼んでいます。
つまり「償還請求権の設定有」の場合は、利用企業側は売掛先と連帯して責任を負い、「償還請求権の設定無」の場合は、倒産や債務不履行があっても責任を負わないことになります。
当然、償還請求権の設定が無い方が後の心配がありませんが、実はファクタリングにおいては必ずしも設定無の方が良いとは言い切れません。

なぜならば、償還請求権があった方がファクタリング会社のリスクが軽減され、買取額のアップや契約締結に繋がりやすいためです。
回収の可能性が高いと踏んでいるのであれば、あえて償還請求権を設定し、高額買取を狙うというのも一つの手です。
債権の内容や経営状況によって、どちらを選択するのかを判断すると良いでしょう。

3社間ファクタリングの活用

3社間ファクタリングは民法に規定された債権譲渡がベースとなっています。
つまり、債権そのものをファクタリング会社へ譲渡する形ですので、債権回収を行う必要が無く、取引先の倒産や債務不履行での未入金のリスクを負うことはありません。
また、3社間方式の方が2社間方式に比べて債務不履行リスクが低いため、ファクタリング手数料が低く設定されているというメリットもあります。

ただし、取引先への譲渡通知又は取引先の承認といった手続を経る必要がありますので、取引先に債権譲渡を知られたくない場合にはおすすめ出来ません。
こちらも、自社や取引先の経営状態を鑑みた上で判断するようにしてください。

連鎖倒産リスクにも要注意

連鎖倒産を連想させるドミノ

連鎖倒産とは、文字通り1つの企業の倒産が引き金となって起こる連続倒産のことです。
倒産した企業に売上債権(売掛金や未収金)を持つ企業は、倒産によって当該債権の回収が不可能となってしまいますので、当然財務状況は悪化・破綻します。
財務状況が破綻し、その企業も倒産してしまった場合、さらにその企業に対して売上債権を持つ企業も窮地に立たされてしまいます。
バブル期と呼ばれた1980年末ごろから1990年初頭は「手形取引」が活発であり、支払いに手形を用いたり、手形によって大規模な仕入れを行ったりしていました。
手形の場合、譲渡人は連帯して責任を負わねばなりませんので、たった一企業の倒産によって多くの企業の倒産を招く結果となったのです。
ファクタリングにはこのような責任はありませんが、万が一に備えて対策を講じておくことをお勧めいたします。

共済への加入が有効

取引先が倒産、不渡り、債務不履行等によって債権回収が不可となった場合、当該債権を補填するための共済制度(独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業倒産防止共済制度など)があります。

参考中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度について」
https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq16_tosankyosai.htm

この制度は、毎月一定額の積立を行い、その積み立てた金額の10倍を限度(最高8,000万円)として事業資金の貸付を行うというものです。

ただし、補填の対象企業は共済加入後6か月以上経過し、かつ、1年以上事業を行っている中小企業者に限られているため、利用には予め加入しておく事・事業を一定期間続けている等の条件があります。
さらに、あくまで「貸付」であるため、後に返済が必要という点にも注意が必要です。
万が一の事態を防ぐために、このような制度も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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