新会社法施行で設立のハードルが低くなった

新会社法が平成17年に施行されたことで、株式会社をはじめとした、各営利活動法人(合同会社、合資会社、合名会社など)の設立がより簡易に行えるようになりました。
主な変更点は以下の通りです。
旧商法 | 会社法 | |
---|---|---|
必要な資本金 | 株式会社1,000万円以上 有限会社300万円以上 |
1円以上 |
必要な役員数 | 株式会社3人以上 有限会社1人以上 |
1人以上 |
取締役会 | 必要 | 原則不要 |
ご覧の通り必要な資本金・必要な役員数が大きく緩和され、誰でも簡単に会社が設立できるようになりました。
しかし、経営のノウハウが無い又は未熟な状態で開業する人が多くなったためか、一時的に爆発的に増えた小規模事業者はわずか数年で大きく減少してしまいます。
なお、中小企業が発表している「中小企業・小規模事業者の数」によると、小規模事業者数は2012年で約334万社、2014年で約325万社、2016年で約304万社と推移しています。
開業5年で約6割が廃業
よほどの幸運に恵まれない限り、経営能力が乏しいまま開業してもすぐに立ち行かなくなってしまいます。
実際に、国税庁の統計を見ると6割程度の会社が5年を経過せず廃業しています。
1年経過後の廃業率 | 約25% |
5年経過後の廃業率 | 約60% |
10年経過後の廃業率 | 約75% |
1年を待たずして撤退する企業も多く存在し、正式なデータはありませんが、20年経過後になると90%以上が廃業していると話す専門家もいるほどです。
なお、こちらは解散登記・清算決了登記から集計した数字ですので、未登記のまま活動を休止した会社(休眠会社)を含めるとさらに大きくなると予想します。
キャッシュを確保することが先決

これからビジネスを始める方にとっては衝撃的な数字かもしれませんが、ある程度のキャッシュフローを確保しておけば廃業を防ぐことが可能です。
ある程度のキャッシュを備えておけば予期せぬ事態にも対応できますし、運転資金が尽きて撤退せざるを得ないという状況を回避することができます。
初期の運転資金についてはできれば6か月ほど収入が無くても耐えうるだけの金額を用意しておき、万が一底を付きそうになってしまった場合は資金調達で対応しましょう。
したがって「1か月当たりに要する費用」「資金調達方法」については、必ず決めておいてください。
なお、新設法人でも利用できる資金調達として以下が挙げられます。
創業融資
日本政策金融公庫の創業融資は、返済期間5~10年と長期である上に無担保で1,500万円まで借入できるという、新規開業者にとって大変ありがたい制度です。
融資が受けられれば安定性の大幅アップが見込めますが、金利が2.25~4.00%と若干高い上、審査も厳しめです。
さらに、事業計画書の作成が必須・融資限度額が自己資金の2倍が限度など、限度額いっぱいの借入をするにはある程度の事業規模が必要となります。
金融機関からの融資
銀行は「貸したお金がきちんと返ってくるのか」を重点的に審査するため、赤字決算ではまず審査に通らず、長期に亘っての売上が望める企業に対してのみ融資を行う傾向にあります。
ただし、新設法人の場合、その企業の成長性も視野に審査を行います。
貸したお金をどのように使うのか、そのお金によって企業はどのように成長できるのか、どのような売上を推移するのか、等が説明出来れば、融資を受けられる可能性は十分に考えられます。
如何に魅力的かつ現実的な事業計画を立てられるかが融資の可否を分けると言えるでしょう。
新設法人でもファクタリングは可能か?

ファクタリングは、原則として利用する企業の信用調査は実施しません。
つまり売上実績や税金納付履歴が無くても利用が可能であり、現状が赤字状態であっても審査に大きな影響はありません。
融資に比べるとハードルが低いと言えますが、一方で「売却する債権」が必要です。
具体的な利用条件をファクタリング会社に確認しましたので、見てまいりましょう。
新設法人でもファクタリング(2社間ファクタリング)の利用は可能ですか?また、可能な場合の条件をお教えください。
A社の回答
・設立後3か月を経過していれば利用可能
・複数回入金がある取引先の売掛債権を有している事
・資金繰り表の作成が必要
・売掛先の信用力が高いこと(帝国データバンクによる評点を基準とする)
・その他、ホームページ等で信用性を判断
B社の回答
・1年以内に設立した会社は利用不可
C社の回答
・設立時期は問わない
・1~2か月程度で入金がなされる売掛債権を有している事
・売掛先の信用力が高いこと(帝国データバンクによる評点が50点以上)
このようにファクタリング会社によっても取り扱いは大きく異なることが分かります。
まとめますと「債権があること」「入金時期が確定している(1~2か月以内)」「複数回の取引実績」「取引先の信用力」をクリアせねばなりません。
利用可能だが審査が厳しめ
上記の理由から「新設会社でもファクタリングは利用可能だが、審査が厳しくなる」という結論となります。
もちろんこれらは一例であり、ファクタリング会社によっては全く審査に影響しないというケースもありますので、1社から断られてしまっても決して諦めず他のファクタリング会社とも交渉してみてください。
なお、審査に関しては3社間ファクタリングの方が緩いため、2社間方式がダメであれば3社間方式を利用するという手もあります。
様々な側面から検討を図り、是非自社にマッチする資金調達方法を見つけてください。